飲食店を開業するには、資格や許可が必要です。何もない状態では飲食店を開業することができません。
どんな許可や届け出が必要なのか調べておかなければ、開業準備を進めたのに基準をクリアできていなかった…という事態にもなりかねないのです。今回は、飲食店の開業に必要な資格や許可について紹介します。
目次
飲食店を始める前の不安
一口に「飲食店を開業したい!」と言っても、真剣に職業として飲食店の開業を考えた際に悩まれる方が多いと思います。
例えば、必要な資格があるのか、どこに何を申請すればよいのか分からない。という不安は自分で調べた上で必ず行わなければいけないステップになります。
また、オープン後にお客様が来てくれるのか、どうすれば地元に愛されるお店にできるのか。という悩み事も出てくると思います。
そのほか、飲食店の開業にはそれなりに初期費用がかかるため、コストを抑えたい方もいるでしょう。その場合は、移動販売の形態である「キッチンカー」でコストを抑えつつまずは自分の店を持ってみるという選択肢があります。
その理由や詳しい費用感は過去のコラムをご覧ください。
飲食店開業に必要な資格は2つ
まずは飲食店の開業に必要な資格を2つ解説したいと思います。
食品衛生責任者(必須)
飲食関係のお仕事をされた方なら聞いたことがあるかもしれない「食品衛生責任者」ですが、こちらは飲食店だけでなく食品の衛生管理が必要とされる場合に必要となります。
また、複数店舗を管理している場合は店舗ごとに選任が必要となり、交付された人が複数店舗の責任者になるということは許されていません。
主な役割として大阪市によると、
営業者は、飲食店等の許可を要する営業の施設ごとに専任の食品衛生責任者を設置する必要があります。食品衛生責任者は、営業者の指示に従い、施設における衛生管理にあたるなどの役割を担うことになります。
とのことでした。
食品衛生責任者になるには
各自治体で開かれている「食品衛生責任者養成講習会」を受講しなければなりません。計6時間の講習後に確認試験を行い、無事修了証書を受け取ります。
・食品衛生学(2.5時間)
・食品衛生法(3時間)
・公衆衛生学(0.5時間)
こちらに関しては都道府県などで詳細がまとめられていますので、受講する場所のホームページ等をご覧ください。
また、食品衛生責任者は店舗ごとに必要ですが、以下の資格を取得している場合は講習会所受講しなくても食品衛生責任者として任命することができます。
・栄養士
・調理師
・製菓衛生師
・食鳥処理衛生管理者
・船舶料理士 など
防火管理者(店舗規模によって必要)
先ほどの資格が必須であったのに対し、こちらの「防火管理者」は店舗の規模によっては不必要となる場合があります。
その基準は、「収容人員が30人以上の店舗を営業する場合」です。
主な役割として大阪消防庁によると、
防火管理者とは、多数の者が利用する建物などの「火災等による被害」を防止するため、防火管理に係る消防計画を作成し、防火管理上必要な業務(防火管理業務)を計画的に行う責任者を言います
とのことでした。
防火管理者になるには
代表的な方法としては「防火管理講習」の課程を修了し、講習修了資格を得ることで任命可能となります。こちらは計3~4日かけて講習を受けることになるので、気軽な気持ちでは取得できなさそうですね。
・甲種新規講習 (10時間)
・乙種講習 (5時間)
・甲種再講習 (2時間)
各店舗によって必要性は変わってきますのでこちらも詳細は都道府県ごとのホームページをご覧ください。
飲食店開業に必要な届出
ここからは資格取得後に必要な届出等に関して解説していきます。
営業する形態によって 内容や条件などが複雑となっておりますので、提出が必要な届出が変わりますので漏れが無いように自分でしっかりと全て確認しておきましょう。
個人事業の開業・廃業等届出書
開業を行うということは、個人事業主になるということです。
会社員だった方はこれから自分で確定申告をしなければなりません。その際必ず必要な届出が「個人事業の開業・廃業等届出書」となります。
国税庁によると「事業の開始等の事実があった日から1月以内に提出してください」とありますので、開業後に忘れず提出するよう準備しておきましょう。
税務署に行く時間がないという方は、Webや郵送でも受け付けているそうなので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
飲食店営業許可
こちらも飲食店を開業する際に必須となる申請となります。
簡単に言えば保健所に対して飲食店を開業すると届出を提出し、営業許可を得る必要がある。という形です。
大阪府においては3ステップを踏むこととなり、一朝一夕で必要物が揃うわけではないので事前準備は欠かせません。
(1)事前相談
(2)申請書の提出・書類審査
(3)立入検査
申請時には先ほど解説した「食品衛生責任者養成講習会の修了者」であることが要件となっておりますので、必ず講習会には参加しておきましょう。
防火管理者選任届
こちらは先ほどの「防火管理者」を取得される店舗に関係がある届出になります。
店舗の防火管理者はこの人に選任しましたという旨を所轄消防署長に届け出る。というイメージですね。
資格取得時の「修了証」など、防火管理者の資格を証する書面を添付し、提出しましょう。
労災保険、雇用保険加入手続き
次に、飲食店だけでなく事業をする上で、アルバイトやパートなどの従業員を雇用する場合に必要となる場合があります。
まず、労災保険は一名でも雇った場合加入が必要になります。労働基準監督署にて手続きを行うのですが、労働者が業務上や通勤中にケガをした場合に保険給付を行います。
雇用保険は従業員の労働状況にもよりますが、事業主は労働保険料の納付や各種届出が義務付けられています。手続き先は公共職業安定所です。
その他営業の内容によって必要な届出
最後に営業する店舗の内容によって必要になってくる届出を一部ご紹介したいと思います。
酒類販売免許
免許と言っても少しややこしい部分ではあるのですが、店舗でお酒を開封して提供する場合は免許が不必要です。先述した「飲食店営業許可」があれば提供可能となります。
しかし、開封していない状態のお酒をそのまま販売する場合は飲食店としてではなく小売などの分類になるため、営業方法に沿った酒類販売免許が必要ということになります。
深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
開封した状態のお酒を提供する場合でも、酒類をメインとした営業形態かつ深夜(0時~6時)も営業する場合は届出書の提出が必要になります。バーや居酒屋などが対象になるイメージです。
開業の10日前までに警察署に提出が必要となり、その中でもいくつか満たさなければいけない条件等ありますので、しっかりと確認しましょう。
では、酒類をメインとしない営業形態の場合はどうなるのでしょうか。
結果として食事をメインとした飲食店では提供する場合は免許や届出は不必要となります。牛丼屋や回転寿司が例が挙げられます。
この辺りは線引きが難しいので、不安な場合は警察署に確認してみましょう。
風俗営業許可
スナックやクラブのようなお客様に接待が伴う飲食店の場合は「風俗営業許可」が必要となります。
接待と言っても偶然お客様とカラオケで歌うことになった。という例も該当しますので可能性がある場合は申請しておきましょう。
そしてこの申請にはこれまでとは違い、かなり多くの書類を準備しなければいけません。警察署に提出する際に別途用意が必要となる書類もあるようですので、しっかりと内容を理解し、開業準備を進めましょう。
菓子製造業許可申請
菓子製造業の許可は、菓子類を製造してテイクアウトを中心に提供する場合に必要です。ケーキ屋やパン屋などはこの許可証がなければ営業できません。
同じように菓子類を提供していても、カフェや喫茶店などで、店内で食べる形態の場合には必要ありません。
菓子製造業許可証を取得するには、設備面で細かい基準を満たさなければならないため、内装工事費用が高くなります。今後菓子類のテイクアウトを始める可能性がある場合は、あとから改装するよりも先に設備を整えておきましょう。
いわゆるパン屋やケーキ屋など、菓子等を製造する営業をする際に必要な許可。こちらも設備面で細かい基準が決められている。イメージとしては小さな工場のように、厨房を密室状態に囲う必要があるのだ。通常の飲食店よりも内装工事費が高くなる可能性がある。
第一種動物取扱業の登録・動物取扱責任者
第一種動物取扱業の免許は、猫カフェや犬カフェなどの場合に必要です。最近はこうした小動物と触れ合えるカフェも人気があります。
猫カフェや犬カフェにもいくつか種類がありますが、そのうち必要なのは「展示」という種類です。
この免許は、半年以上の実務経験がなければ取得できません。また、卒業に1年以上の時間がかかるスクールを卒業することと、民間資格を所有していることなども必須要件です。
取得に時間がかかる免許なので、猫カフェや犬カフェの開業を検討している場合は早めに行動に移しましょう。
飲食店開業に取得しておくとベターな資格
飲食店に必要な許可や届け出はたくさんありますが、飲食店開業に必須の資格というものはそもそもありません。しかし、資格を持っていることがお店のアピールにつながる可能性も高いので、関連する資格は取っておくと安心です。
ここでは、飲食店開業におすすめの資格を紹介します。
調理師免許
飲食店を開業するには、調理師免許が必須であると勘違いしている人も多いのではないでしょうか。実際には調理師免許がなくても、飲食店を開業して料理を提供することができます。
調理師免許は、飲食店開業で必須の資格ではありませんが、保有していれば調理の技術や正しい知識をもっていることの証明になります。調理に関して高い技術があることがわかるので、もっている場合は許可証を店頭に飾るなどでアピールするのがおすすめです。
調理師免許があれば、講習会を受けずに申請するだけで食品衛生責任者の資格を取得できます。開業前は何かとバタバタして時間もないので、講習会を受ける時間をとらなくても良いのは大きなメリットです。
将来飲食店の開業を考えている人は、ぜひ調理師免許の取得も視野に入れておきましょう。
料理に関する資格
調理師以外にも料理に関する資格はあります。たとえば、野菜を使ったメニューを出すお店の場合は、野菜ソムリエがおすすめです。
野菜ソムリエは、ベジタブル&フルーツマイスターなど3段階の資格があります。野菜の保存方法や適切な調理法などの知識を習得し、その知識を駆使すれば、栄養バランスの整ったメニューなどを考案することもできます。
ほかにも、和食マイスターなどもアピールできる資格のひとつです。和食のマナーや和食に使う食材の知識などを幅広く得られるので、和食を出すお店なら習得しておいて損はないはずです。
お酒に関する資格
お酒をメインに出す飲食店を開業する場合は、お酒に関する資格を取得するのも良いでしょう。
お酒の資格で最も有名なのは、ワインを中心にさまざまなお酒の知識を証明する「ソムリエ」です。ソムリエには、JSAソムリエとANSAソムリエの2種類の資格があります。
JSAソムリエは日本ソムリエ協会が認定する資格です。ソムリエの資格といえばこのJSAソムリエを指します。この資格を取得するには、酒類の業界に3年以上従事した経験が必要です。
ANSAソムリエは、全日本ソムリエ連盟の資格です。経験は不問なので、JSAソムリエよりも取得しやすいでしょう。
ワイン以外にもお酒関連の資格はあります。ビール、日本酒、焼酎、カクテルに関する資格は、以下のとおりです。
・日本ビール検定
ビール好きが受検することが多く、広くビールに関する知識を問われます。
・ビアアドバイザー
おいしい飲み方やビールに合う料理などの知識が出題され、20歳以上なら誰でも受検可能です。
・ビアテイスター
テイスティングの基本的な能力を認定する資格で、味や品質などの評価に関する知識が問われます。
・日本酒検定
日本酒に関する知識が問われる愛好家向けの資格です
・利き酒師
テイスティングの能力を問われ、日本酒に合う料理や酒器の提案なども含まれます。プロ向けの資格ですが、愛好家にも人気です。
・焼酎利き酒師
テイスティング能力のほかに、焼酎に合う料理や基本知識が問われます。
・カクテル検定
カクテルを楽しむための基礎知識が問われる資格です。3級から1級まであります。
これらの資格はいずれも必須ではありませんが、持っているとアピール材料になるのでおすすめです。SNSやサイトなどで発信したり、店頭に認定証を掲げたりすれば話題になるので、集客やリピーター獲得につながりやすいでしょう。
お菓子に関する資格
スイーツやパンを出すお店なら、パン製造技能士や菓子製造技能士の資格がおすすめです。どちらも国家資格なので、持っていると製菓や製パンにおける技能が高いことをアピールできます。
特にパン製造技能士はパン作りの唯一の国家資格なので、付加価値を付けることもできます。どちらも実務経験が必要な資格なので、別の店で修業をしてから独立する場合にはぜひ取得を考えましょう。
コストを抑えて飲食店を開業するなら
コロナ禍をきっかけに、店舗を持たずに開業する手法が増えています。キッチンカーや屋台など店舗を持たない営業形態なら、店舗を維持する固定費が実店舗ほどかからないので、日々の支払いを抑えることが可能です。
しかも、店舗がひとつの場所に固定されていないため、移動しながら集客しやすい場所に出店することができます。時間帯や曜日によって人が集まる場所は変わるので、実店舗よりも幅広い客層を取り込むことができ、収益を確保しやすくなります。
店舗を持たない飲食店をもつメリットについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
店舗を持たずに開業するなら、「HIRAKEL」がおすすめです。「HIRAKEL」なら低予算でモバイルコンテナやワゴン型屋台をレンタルできます。
はじめて飲食店を営業する方でも、安心して自分のお店を持つことができます。ぜひ「HIRAKEL」を活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
飲食店を開業するためにはさまざまな許可や届け出が必要です。開業時はなにかと準備がかかるため、計画的に各種申請の手続きを進めておくようにしましょう。
また、開業するにあたって、特に必須となる資格はありません。しかし、資格があればお店のアピールポイントになり、お客様からの信頼を集めることができます。自分のお店で扱うものに関する資格を取っておいて損はないはずです。